KTH便り10~期末プロジェクト~

KTH便り10~期末プロジェクト~


こんにちは。

諒です。

2022年5月の様子をお伝えします。

草が生い茂り、緑が濃くなり、キャンパス内には様々な花が咲いています。ここにいると季節の移り変わりを日本にいるとき以上に感じます。

期末プロジェクト

Applied Nonlinear Optimization の最終プロジェクトでは、非線形最適化問題のソルバーの構築を行いました。

二次計画法はアルゴリズムがわかればあとは行列でシンプルに計算できるので、あまり難しくありませんでした。また、ここでつくった二次計画法ソルバを使って一般の非線形最適化問題に応用するための逐次二次計画法ソルバの作成も行いました。

Control Theory and Practice, Advanced Courseでは4タンクシステムの水位制御を行いました。ちなみに、KTHの学部生向けの制御の授業では2タンクシステムの制御の実験を行うらしいのでそれの発展版になります。

このプロジェクトは、モデリング制御の2パートで構成されています。

モデリングの実験では各班に割り当てられたタンクシステムについて、ポンプの性能、排水穴の径、送水弁の分流の特性などを調べるための実験を行います。水位計が下方2つのタンクのみ取り付けられており、上方の水位は直接測れないという仕様になっており、適切な実験を各班で設定してモデルパラメータを求めます。

制御の実験では、モデリングで得られたパラメータを元に分散制御器(Decentralized controller)、デカップリング制御器、ロバスト制御器の設計を行い、実際に水位の制御(所望の水位に変動させる、外乱の下での水位の維持)を行います。排水穴の径によってこの4タンクシステムの動特性は大きくことなり、制御器の良し悪しも変わってきます。

この実習を通しての気付きは、

  • 実社会のシステムにおいて状態変数を正確に知ることは多くの場合困難であること、
  • 制御性能限界の存在、非最小位相系の制御の難しさ
  • です。制御対象モデルに不安定零点が含まれ制御性能限界が存在するとき、所望の制御性能を満足する制御器は設計不可能であることがあります。その場合、LQRやMPCなどの高等な制御手法を用いることは本質的な制御性能の改善には繋がらず、モデリングやシステム設計そのものを見直す必要があることを教えてくれます。

    また、どのモデルにも公称モデルと実際のシステムとはギャップがあり、これらの影響を考慮した制御も重要になります。今回のプロジェクトでも、測定結果が配管の微妙な位置のずれなどによって毎回異なり、モデルパラメータが必ずしも正確とは言えない中で、コントローラー設計を行う必要がありました。

    写真